建築主の所有する山の木を切り出して住宅をつくる。一昔前なら当然のように行われていたことが見られなくなりました。その原因は、安価な輸入材(ウッドショックの前の話)に取って代わったことや、簡便な建材品への移行など、住宅建設の安易な合理化と商品化にあります。住宅の作り手が売り手に、建築主が消費者に、「家をつくる」から「家を売る・買う」に変わると、”商品”には関心が集まりますが”素材”まで気にする人は少なくなります。
近年、裏山の環境保全が注目され、戦後植林された木の利用が公共建築やバイオマス発電で進められています。しかし、日本の植林の歴史は古く、山に木を植えた人達の”次の次の世代”のための住宅関連での利用を目的に、長期の裾野の広い循環型の事業として繰り返し行われてきました。自分の持ち山にある木で自分の家を作ることは、祖父、またはその先代が植林した木で家を造ることですから、その巡り合わせにはありがたみを感じます。
所有林で家を建てる。あたりまえのことであり、また、どこか特別なプロジェクトです。
2004年8月 立木の調査
場所は勝山市北谷町杉山。設計図・構造図をもとに、材料に必要な原木を調べます。杉の立木の状態、節の程度、径と長さから良い木を選び印をしていきます。
2004年10月 伐採
用材を伐採し、そのまま寝かせて葉から水分が抜けるのを待ちます(葉枯し)。
葉枯らしは初期の乾燥が早く進みます。
2004年12月 玉切りと搬出
雪に覆われる前に、山で枝葉を落として必要な長さに切りそろえ、製材所へと搬出します。
2005年1月2月 製材
製材所で必要な寸法に木取りし、乾燥させます。今回は一部の材料を人工乾燥機で乾燥させています。
2005年4月5月 木造り
建て方に向けて、接ぎ手仕口などの加工をします。
その際に、材料1本1本の曲がり、反り、ねじれ、節の位置などを確かめて、適材適所になるように部材を加工します。
2005年5月末 建て方
お日柄の良い日にちを選び、建て方作業(建前)を行いました。
作業は2日間、屋根の野地板を貼るところまでが作業範囲です。
2005年6月〜12月 内外部の造作、竣工