築100年を超える伝統的民家のリノベーションです。
切妻の越前瓦の屋根、しっくいと格子組、杉下見板の外壁のこの古民家は「ふくいの伝統的民家」としての外観の特徴をよく表しています。高齢の所有者が住み続けてこられましたが事情により空き家になってしまいました。それを偶然に見にされた他府県在住のご家族がUターンの住宅に可能かどうかとの相談から始まりました。
築100年を超えるような古民家では、老朽化が著しく進んでいたり、耐震性・強度、断熱・省エネ性能などの機能性が現代住宅に比べると劣るために、詳細な現況調査と構造的なチェックを元に購入を検討したいとのご依頼により現況の調査を進めました。規模が大きいためにリノベーションにかかる費用が膨らむことが懸念されましたが2階部分を計画対象外として1階部分において断熱補強をする省エネ計画としました。ふくいの伝統的民家としての外観保全のための補助、耐震補強工事への補助など申請することも可能となりました。
古民家としての価値が認められても空き家になってしまうと急に傷みが進むために住み継がれることなく放置されて解体されるのを待つ古民家が多くあります。今回はご家族の深いご理解により受け継がれることになりました。伝統的な古民家の活用による景観の保全と地域コミュニティの活性化につながる事例となりました。

改修 / 木造 / 2階建て / 伝統工法
所在地 / 福井県勝山市 用途 / 専用住宅 家族構成 / 夫婦+子供
敷地面積 / 1200㎡ 床面積 / 301㎡
屋根;越前瓦葺き
外壁;杉下見板,漆喰塗り

工事内容;耐震補強、省エネ改修(断熱材・開口部の断熱・漏気対策・太陽光発電+蓄電池)、水回りの更新、老朽箇所の修繕

計画前の南側の外観。外壁の杉板の痛みは激しいが、よく管理をされていて状態のいい空き家と言えます。

2階部分のツシ(物置スペース)には以前使っていた囲炉裏の煙出しが残っていて築100年を超える伝統的な古民家の様子が伺えます。

勝山市の歴史的建造物の承認を得て「福井の伝統的民家」の補助事業として外観の保全工事を行いました。

大戸(玄関)を入って4間×3間半のニワ(玄関ホール)を内玄関ホールとキッチンダイニングに区画をしています。床暖房を設置していますが、天井壁は清掃程度にして以前の形が残るようにしています。