福井県大野市の浄土真宗本願寺派常興寺の本堂は桁行7間、梁間6間に向拝の柱が4本建ち、入母屋造り、桟瓦葺きの大きな屋根が特徴になっている。
大正12年に着工し、昭和6年頃に竣工。棟梁は永平寺大工の大久保市左衛門の記録があり、その他にも、落慶法要時の写真も残っている。
竣工後80年を超えて、大きな事故も無く今まで来たが、今年の春に大風が吹き、外壁の土壁が大きくひび割れる被害を受けた。
外から押される力が働き、土壁の荒壁下地から割れが入り、コーナーの部分では仕上げの漆喰が剥離、欠落している。
土壁が剥がれ落ちた箇所から、この地域の一般的な工法の茅小舞が見えている。
また、間渡し竹は柱に差し込まれていて、竹釘(ウグイス)は見られない。
今回、自然災害で壊れてしまったが、建築後90年ほどの長い間、支障なく今日まできた。一般住宅が40年から50年で建て替えられることが多いが、土壁と漆喰の木造建築は世代を超えて存続することを可能にさせる。
今回の被害の修繕にあたり、土壁以外の新しい工法も検討したが、やはり、寺院に必要とされる永遠性を考えると、土壁での原状復旧が一番ふさわしいとの結論になった。
仕上げの漆喰が浮いている部分や、欠けてしまった角部の壁を落とし、下地調整をして漆喰仕上げの塗り直しを予定している。
荒壁土を付け直す壁の下地は、既存部と同じ、間渡し竹と茅小舞にしている。
ただ、間渡し竹は、深く打ち込んだ竹釘(ウグイス)に緊結して、外れ防止対策をしている。
2016.09.29