住宅に土壁を採用したいと考えている。 

古民家や寺院建築の再生工事では、既存の土壁を活かして仕上げることが普通に行われるが、新築のケースではまず見ることが出来なくなっている。 
古民家の再生で、土壁の味わい深い雰囲気を残すことで、長い時間という重厚さを増すので、多少のコストが必要でも、残す方向に自然と計画が進む。 

しかし、住宅の新築計画になると、ボードの下地に漆喰や流行りの珪藻土で仕上げる左官仕事に比べると、小舞下地に荒壁土を塗るところから始める土壁は、コストがかかるので、提案されることもない。 

にもかかわらず、土壁を…と考えるのには、機能性において優れたものがあるから。 

まとめておくと、 

1.調湿機能…湿気どころか水を吸う。わずかな厚みの珪藻土の調湿機能など土壁に比べると無いに等しい。 
2.蓄熱機能…断熱材と組み合わせて、暖房・冷房時の熱を保持できるので、冬に暖かく、夏に涼しい内部空間ができる。 
3.経年変化が少ない…他の工業建材に比べて、経年劣化のスピードが緩やか。また、時間が経つごとに良い雰囲気を出していくので、日本の文化財建造物は、ほぼ木と土の建物である。

土壁としっくい

新築の打ち合わせの時に、土壁の良さを少しでも理解していただきたいので、サンプルを左官屋さんに作ってもらった。 
サンプルでは、荒壁土から仕上げの漆喰塗りまでの工程がわかるようになっていて、触っていただくこともできるので、その良さを肌でご理解いただけたらと考えている。

2020.03.28