土壁の断熱と蓄熱ースゴヤ(永平寺町の家)

 
土壁は昔から用いられてきた伝統的な工法で、耐力壁としての役割の他に、調湿と蓄熱に高い性能があることが分かっている。
その土壁に断熱材を組み合わせて、冷暖房において省エネルギーで、住みよい住空間を目指している。
 
 

 
冬時期に編んでおいた竹小舞の下地に、気温が上がるのを待って荒壁をつけた。
土壁は福井県内宮崎村の土に藁を混ぜ込んでおいたものを使っている。
 
 

 
裏側(外部面)にデベソが飛び出るように押さえ込みながら塗り上げて、そのデベソを撫でておくと、はがれにくい土壁になる。
 
 

 
室内側の土壁をつけて、数日乾燥させた後に、外部側の土壁を塗り(裏かえし)、荒壁がヒビ割れ、すっかり乾燥するまで待つ。
 
 

 
 乾いてきたら、室内側には蓄熱体、外気側には断熱体として働くように、外部側にボード状の断熱材を張っている。
 
 

 
福井の4月半ば過ぎの気候は一番乾燥する時期なので、1ヶ月も待たずに荒壁土は乾燥する。
荒壁全体に大きくヒビ割れが入り、柱・梁の際で隙間が出来てくる。
 

 
荒壁の表面も、収縮で凸凹になるので、ヒビ割れと隙間をふさぎ、凸凹になった表面を平らにならす下地処理(大むら直し)を行っている。
 
この後、さらに乾燥させる。
 2018.04.30

 

 土壁の小舞下地ースゴヤ(永平寺町の家)

 
この住宅では、一部に土壁を採用している。
 

 
まずは、荒壁土をつけるための竹の小舞下地を造った。
 
 
小舞下地は竹、竹と茅(ススキや葦)、雑木の枝などを藁縄で編んでつくる。
 

 
福井では、茅を用いた小舞下地を見ることが多く、そうした建物を修繕する際には、上の写真のように茅小舞として直すことも行うが、竹の小舞下地が一般的だと思う。
 
 
 
土壁は、自然の柔らかい表情を見せて、構造壁としても有効に働く。
木も同じように、自然の仕上げ材で、また、構造材でもあるので、その組み合わせで建築を造ることは理想的で、日本の建築はこの組み合わせで造られてきた。
 
ただ、近年の合理性と経済性を優先する建築現場では、工期が長く、制限も多い土壁は、ボードを下地とする簡易な方法にすっかり代わってしまった。
 
また、昔の土壁の家は
「あちこちに隙間があって、寒いし暑い」
というイメージと現実があるのも事実で、文化財建造物の現場以外では、使われることのない工法になってしまい、土壁を造るための材料と職人も無くなる寸前にまでなってしまっている。
 
しかし、最近では、現代的な断熱材や構法と土壁を組み合わせて、構造的に強くて、省エネルギーを考慮した家づくりに取り組む事例が増えてきている。
 
この家では、土壁が持つ蓄熱性を利用して、薪ストーブと組み合わせることで、暖かい住宅を目指している。
 
 

 
ストーブの背面の壁一面を厚みのある土壁にして、熱をそれに蓄えて、家全体に効率よく回すことができないかと考えている。
そのため、土壁の外側に断熱材を入れることにして、隙間風も入ることのないようにしている。
 
 

 
 今後、春を待って壁土をつける予定にしている。
 
 2018.01.20