土壁の優れた機能性を活用する

 
 
たいていの地域で、周辺から直接手に入れることができる土は、建築材料として世界中で使われています。
 
日本では、形成・焼成して、瓦として屋根を葺いたり、壁に木と竹で下地を作り、塗り上げることで小舞土壁になります。
  

小舞下地…木と竹を藁縄で格子状に編み、壁土の下地を作ります。


  
しかし、最近の経済的合理性を優先した建設現場では、工業製品の建材が使われるようになり、新築の現場で土壁を見ることは少なくなりました。
 
しかし、近年、化学物質や内部結露からの室内環境の改善、建築物の環境負荷の軽減、省エネへの配慮の観点から、土壁が見直されています。
 
 

小舞下地の表と裏から、数回に分けて壁土を塗り重ねます。


 
 
土壁は建築材料として優れた利点を持っています。
 
1 土壁には調湿機能がある。
 
土壁は工業性の建材に比べて、大量の湿気を吸収、放出するため室内の湿度を調節することができます。
土壁の古民家では、室内の湿度の変動に合わせて、土壁が水分のやり取りをするため、湿度の変動が緩やかであることがわかっています。
 
2 土壁には蓄熱機能がある。
 
地中は、外気の温度変動の影響が少ないため、野生の動物は地中を利用して生活しています。
厚みのある土壁は、建築材の中でも、熱しにくくて冷めにくい性質を持つため、暖房機器と断熱材をうまく組み合わせて、夏涼しくて冬暖かい室内環境を可能にします。
 
3 無垢の木との組み合わせに最も適している。
 
構造材と仕上げ材を兼ねる木材、土壁には、50年、100年と修繕しながら維持できる技術の蓄積があります。また、年月を重ねて色彩や肌あいが変化し、日々の生活の歴史が「愛着」「郷愁」という形で刻まれ、古くなってからの味わいが無垢の木と土壁にはあります。
 
4 これからの日本の社会に最も適した構法である。
 
平均寿命が長くなっている現代日本の社会において、短期間で建替えを繰り返す建築の寿命を長くすることが求められています。
老朽化や使い勝手の悪さが理由で、建物の改善の必要性が出てきたら、直せばいいのです。
土壁は、古くなった上から塗り重ねたり、土を落として練り直し、再利用することができる工法です。
 

年月を重ねて、味わい深い土壁を残し、次の世代の建築に活かすことを目指しています。